ノムラのコラム

ライターの端くれが綴る徒然なる日々の記録など。

昨日観た映画について

フジロックへの連続参加記録が途絶えた今年。Instagramのタイムラインを埋め尽くすリア充投稿に歯がゆい思いを募らせつつ、ぽっかりと予定の空いてしまった休日を久しぶりに映画鑑賞へ費やすことにした。分刻みに無理くり観た3本の話題作を、備忘録感覚でここに記録しておきます。


まずは我らが訓さんが声優、共同脚本、キャスティングディレクターなどマルチな才能を遺憾なく発揮したウェス・アンダーソン監督の最新作「犬ヶ島」。

www.foxmovies-jp.com

 

これまでにあまりストップモーションを使ったアニメは観たことがなかった小生ですが、まるで現代的な人形劇のようなビジュアルに下を巻くばかり。しかしこのクオリティを実現するとなると製作サイドはすこぶる大変そうですね。。それでも終始観やすく感じられたのは、ウェスらしいウィットに富んだ会話や登場キャラクターの個性があってこそなのかも。それに脇を固める声優陣もとにかく豪華。鑑賞後にエンドロールのスタッフクレジットを眺めながら、「え、この人もいたの?」なんて発見も。しかしスカーレット・ヨハンソンの声を聞くと、スパイク・ジョーンズ監督の「her」のAIに完全に自動変換されてしまうのは何故なのでしょう。まぁ、好きな声なんですけどね。

とりあえずは様々な媒体で既に公開されている「犬ヶ島」に関する記事を洗いざらいチェックしてみようと思います。

 

 

続いては、邦題「僕の名前で君を呼んで」。

www.uplink.co.jp

 

日本では4月に公開されてから瞬く間に話題が話題を呼び、僕の周りでも賞賛の雨嵐。ネタバレを避けつつも、鑑賞の機会を今か今かと狙っていてようやくこの日実現したわけなんだけども、とにかく前評判通り、素晴らしかったわけです。

舞台は1983年の北イタリア。避暑地でもある小さな町へ家族に連れられやってきた少年エリオ。そしてその父親の教え子であった大学院生の青年オリヴァー。物語の主人公となるこの2人の美しい青年が織りなす情緒的なBL作品なのだけれど、これまでのBLとは一線を画す出色の出来。

瑞々しい湖畔や川、そして清々しい自然光が差し込む緑溢れる大自然。それはまさに息を呑むような絶景で、眺めているだけでも心が澄み渡っていく景色そのもの。そこに半裸のギリシャ彫刻のような美青年二人が登場するとなれば、世の女性からしたらまさに眼福の極みですよね。男の僕でさえもなんの躊躇なくその二人の恋の行方を微笑ましく目で追えました。

兎にも角にもそんな美しさがテーマとなった本作ですが、魅力はそればかりではなく、時代背景的に禁じられた愛を巡る二人の関係を優しく見守るエリオの両親が特に素晴らしいんですよね。今でこそ世の中的にはLGBTQなどの社会問題への理解ある人たちが増えてきましたが、作中の時代は1980年代。同性愛劣勢がマジョリティとなる時代とあって、物語の終盤で語られた父親の言葉には深い教養と愛情が感じられ、一語一句逃すことなく胸に留めておきたいほどの威力がありました。

さらに青春という限られた儚くも美しい瞬間を精一杯悩みながらも葛藤し、成長していくエリオ。その彼がラストの3分間で見せる物憂いな表情が脳裏にこびりついて離れません。タイトルの「僕の名前で君を呼んで」というのも同性だからこそ成立した呼び合いだったのかな。

 

そして後になって知ったのは、英語、フランス語、イタリア語を操るトリリンガルの主人公エリオを演じたティモシー・シャラメは名門コロンビア大学卒の超インテリだということ。あの知的な雰囲気は演技だけでなく持って生まれた天性の素質でもあったというわけですね。うーむ、納得。夏の終わりにまた観るべく、見応えのある作品でございました。